共に




あるとき時尾と歩いているとこう言った。
「私はこういうと失礼だとは存じておりますが、あえて言わせていただきます。」
いつもは躊躇なく言葉を走り出させる女なのに、急に改まって・・・と笑みを浮かべたが、
次に口に出した言葉は一挙に自分を炉辺へ叩きつけるようなものだった。
「あなたはいつも笑っておられますが、その笑みには常々心底軽蔑させられていますの。
その何もかも諦めたようなせせら笑い、腹が立ってしょうがないんです。
これ以上親交を深めても私があなたになんとなることはないでしょうから、この話は無かったことにしましょうか?」
そしてそのまま・・・時尾は振り返らずに離れへ帰っていってしまった。
気持ちよい初夏だというのに、一気に凍てつかされた自分がいた。


正直反論もなにも出来なかった。
すべては見抜かれていたのだから。


みんな死んだ。なにもかも失った。
新たな人生なんてどうでも良かった。
ただ側に居て自分を慰めてくれる都合のいい女が欲しかった。
勿論決して時尾をそういう目で見ていたわけではないし、本当に心惹かれてしょうがなかったが
そう思われても仕方ないとも感じていた。
そのくせ死ぬ勇気も中途半端に持ち合わせていない。
・・・その昔三番組長として名を馳せ、果敢に敵陣へと切り込んだ自分はどこにある?
そしてこれから何を持って生きていけばいい?
20代という貴重な日々はすべて戦場に消え、残りの寂れていく人生を、一体何を持って生きていけばいいのだ?




自ら答えを出さねば一生このままだっただろう。
それを、時尾が問いただしてくれた。
自らの心を鬼にして。



また暫くして、時尾と会う機会が現れた。
その時の斎藤はすでに迷いを吹っ切っていた。
真っ向から時尾を見据えてこう言った。
「答えが出ました。あなたのお陰でやっと目を覚ますことが出来ました。
私は・・・この明治という世でもお仲間の信念を死ぬまで抱えて生きて行こうと思います。」

その時初めて女の顔が綻んだ。
その顔は今まで見たどの女よりも美しいと感じた。
そう感じた時、彼の顔は少年の頃に戻ったようにほんのり赤くなった。

「その・・・。」

己にあたる女の目線がこんなにも恥ずかしいのはこれが最初で最後に違いない。
恥ずかしさで消し飛びそうな心をなんとか抑えてやっとこういった。
こんなときに、気の利いた言葉一つ出せないとは本当だったんだと思いながら。

「その・・・もしよろしければ、私と共に・・・この先を歩いてはくれませんか?」

照れ臭そうな顔を浮かべながらも、ともするとしどろもどろになりそうな男。
本当にこの男が泣く子も黙る新撰組の三本の指かとは誰もが疑うほどの狼狽振り。
その様に時尾も思わず頬を緩ませて、

「はい。こちらこそ・・・よろしくお願いいたします。」

そう、答えた。
時尾も顔を赤らめてうつむいている。
蚊の鳴くような声で、この時ばかりは初めて恋をしたような顔をしてお互い立ち尽くしていた・・・



「お前は気を使いすぎる。たまには昔のように気の聞いた事も言ったらどうだ?」
ゆっくり手を伸ばして時尾の頬を触って微笑んだ。
時尾も思い出したように笑って、
「とんでもございません。あのときは本当に失礼なことを申しまして・・・。
ただ、私も旦那様があのようなままでは私に似合わぬと思っておりましたから。」
そう冗談交じりに言う。
「ほほう、ではお主はそれほどいい女なのかな?」
おどけてたずねると時尾はこう答えた。
「いい男にはいい女が付くと申しますでしょう?・・・だから私はいい女。」
いわずもがな、時尾なりの愛のことば。
思わず二人で笑ってしまった。





これからまた、先に続く長い人生という道のり。
死ぬまで抱え続けねばならない「仲間の思い」という咎。
だが決して捨てることなく生きてゆこう。
そして「答え」へと導いてくれた時尾と共に、
未来へと生きてゆこうと思う。













らぶビームにヤラレた的後記
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初めての斎時です。てかまた書き直します。(下手)
史実と妄想を合体してみたのがこれです。
ここに出てくる女はすべて実在かつ斎藤の過去の女です。
結婚したとか、京都時代の女とか。
都合によりやそ死亡させましたが(非道)
最終的には時尾さんにたどり着いてらぶらぶという・・・。
どうも時尾さんのママは美人だったらしいので、私的にに時尾さんも美人希望!
蒼紫しかり剣心しかり、壊れかけたことがあるのに斎藤はない
というのは(確かに無さそうだけど、思うに彼も20代すべてを血に
まみれて過ごしたわけで、仲間を失って壊れないのは凄過ぎかと)
オカシイかな〜と思ったわけです。
時期的に時尾と結婚した辺りから明治政府に仕え始めたので、是非時尾さんに!!
てか、史実を突き詰めるとやそさんやら密偵になった時期やら放浪の時期やらで
考察すらもめんどいので、もう時尾さんなのよ。(脅し)
ある意味彼は「死ぬまで仲間の分まで信念を貫き通さないといけない」
という枷をはめられていると感じたんで、こんなあらわし方になりました。
普段は枷などとは感じてないでしょうし、彼の精神力からいったら
あれでしょうけど、枷がいつか自分のなかで昇華され信念という形で
彼を支配するようになったのがるろ剣の彼の姿かと。
こう言うと、時尾>操>薫の順に強いと思われ^^;(薫ファンごめん)
しかしどうも斎時はらぶらぶ過ぎていかんですな。


あ、最後のオチ、ししおさんです^^;
戦って死ねはスプリガンから。好きな名言だから(阿呆)
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